結核は決して過去の病気ではなく、また、最近急にはやりだしたものでもなく、昔から常にある怖い感染症です。
今でも世界中で毎年800万人の患者さんと300万人の死者を出しており、とくに開発途上国では、成人における感染症死亡の第1位です。
日本では昭和26年当時、患者数60万人、死亡者数10万人近くを数える「死の病」として恐れられていました。しかし、医学の進歩と生活環境の改善により、患者数は減り、結核は過去の病気と思い込むまでになりました。ところが、平成9年から新規患者数が増えはじめ、以降増減しています。
現在、毎年4万人あまりの新規患者が発生し、3千人近くの人が結核で亡くなっています。患者数がここにきて増えたのは、ひとつには高齢者の発症が多いことです。
肺結核の原因は、結核菌という細菌です。
結核菌は感染者のくしゃみや咳によって飛散し、空気感染する性質を持っています。結核菌は、未感染の人に感染しすぐ発症する場合と、感染後、発症せずに体内に潜伏し、長い年月の後、突然発症する場合があります。
そのため、自覚症状のないまま感染者になっているということも珍しくありません。
結核の症状は風邪とそっくりです。せきやたんがでる、身体がだるい、微熱が続くなどです。
せきが1ヶ月以上続く場合は、医療機関を受診してください。
ただ、最近の日本では慢性のせきの原因として、気管支喘息や咳喘息などのアレルギー疾患が多く、検査もせずに、その治療をしてしまう場合が多いようですが、やはり一度は胸部写真を撮ってもらう事が必要です。胸部写真による放射線の被爆は問題となりません。
結核は、早くに発見し治療をきちんと受ければ必ず治る病気です。
長患いという印象がありますが、現在では3~4種類の薬を6~9ヶ月服用することで短期間に治すことができます。
排菌がなければ通院で治すこともできます。治療に時間を要することから、非常に進行した状態では薬の効果が出る前に死亡することもあります。
一番の問題は、肺結核の治療は長期間に渡ることと、内服後、症状は速やかに改善することから、完治していないのに患者さんが勝手に服薬を中止することです。服薬の中断があると、身体に残っている結核菌が抗結核薬への耐性を獲得してしまいます。薬剤耐性を獲得した結核菌による肺結核を「多剤耐性肺結核」といいます。抗生物質への耐性を獲得した結核菌に対しては、有効な治療法が無いため再び「不治の病」としての肺結核となってしまいます。